day5: 幕間

「おう、フィレーン。学校楽しいか？」
「なんで野上が開封の部屋にいるんだよ。」
フィレーンはいつものよう学校帰りに開封の部屋に遊びに来ていた。
「暇だから。」
野上はめずらしく開封の部屋に来て、ダイニングでくつろいでいた。
「彼女と喧嘩でもしたのか？」
フィレーンの問いに、野上は苦笑した。
「お前、いつから開封みたいなこと言うようになったんだ？」
「割と最近。」
「まあ、残念ながらはずれだけどな。」
と、（勝手に淹れた）コーヒーを一口飲む。
「それより開封は？」
「買い物行った。」
フィレーンは答えながら、鞄を床に放って、野上の向かいに腰掛けた。
「で、彼女はどうしのさ。」
「お前、俺がいつも彼女と一緒にいるとでも思ってんのか？」
野上のさめざめした声に、フィレーンがキョトンとする。
「違うの？」
「ガキの発想だな。」
「ガキで悪かったな。」
「友達と遊びに行ったよ。」
「は？」
唐突な会話の変化にフィレーンはついていけなかった。
「だから、俺の彼女。友達と遊びにいった。」
「ふーん。」
正直、フィレーンはそんなことに興味はなかった。
「あれだな。将来の決まった男の余裕ってやつ。」
「何が余裕だよ。寂しくて遊びに来たんだろ。・・・・・て・・・将来が決まったってどういうことだ？！」
フィレーンが驚いたのを見て、野上が満面の笑みを浮かべた。
「そ・の・ま・ん・ま。もう、結婚決まったんだよ。ご両親に挨拶にも行ったし。」
「・・・・・・え」
フィレーンの呆然とした顔に野上は満足した。
「ただいま～」
玄関から開封の声がした。帰ってきたようだ。
「えぇぇーーーーーーッ？！！」
「どうしたんですか？！」
フィレーンの叫び声を聞いて買い物袋を持ったまま、開封がダイニングに駆け込んできた。
「よお開封。式の日取り決まったから教えてやろうと思って来たんだが何かフィレーンの奴驚いちゃってさ。」
「ああ、決まったんですか。おめでとうございます。いつですか？」
「開封知ってたの？！野上が結婚するって。」
焦るフィレーンを見て開封は首をかしげた。
「あれ？フィレーンさんは知らなかったんでしたっけ。あ、そういえば言ってませんね。でも、そんなに驚くほどのことでもないでしょう。」
「だだだだって野上だよ？！」
「ええ。もう、いい年ですしね。付き合って２年でしたっけ？二人がいいならいいんじゃないですか？」
「親とか何も言わないの？！」
「結構気に入られたって言ってましたよね。」
「そんなアホな！！」
「フィレーンさん。失礼ですよ。」
困った顔をして言ってから、野上の方へ顔を向ける。
「で、いつなんですか？」
「１０月４日。本当は６月の花嫁ってやってみたかったんだけど、一年も延ばすのヤだしね。」
「はは・・・幸せそうで何よりですよ。」
「開封も幸せにならなきゃダメだぞ。」
「ですねぇ・・・」
「て、訳で酒。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
開封の表情が固まった。
「さぁて、フィレーンさん。今日は夕飯食べていきますか？」
くるりと振り返りフィレーンに話しかける開封。
「おい！」
「え？あ、うん。」
フィレーンがそれに答える。
「開封！」
「今日はハンバーグですよ。」
野上が懸命に開封に声をかけるが、開封は反応しない。
「おーい！何無視ってんだよ！！」
フィレーンが一瞬野上を見た。
「へぇ～。」
が、無視を決め込んだようだ。
「てめぇら俺の話聞けよ！！」

結局、野上が酒をあきらめるまで、二人は無視を続けたのだった・・・・・・

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